■理想の相手



今日もロケット団はジャリンコピカチュウGETを目指して彼らの動向を見張っていた。


「ピカチュウ。カロスリーグ優勝目指して修行だ。」

「ピッカ♪」

「ポカロンに向けて練習するわよ。」

「僕は良い発明を考えます。
サイエンスが未来を切り開く為に。」

「プニちゃん。あのね。
ユリーカは将来良いトレーナーになる為にデデンネ達のお世話をた~くさん頑張っているんだよ。」



その様子をいつもの彼らは双眼鏡で見つめる。


「やれやれ。お子様は気楽で良いニャ。」

「俺達は仕事中だと言うのにあいつらは夢追っかけ中だもんな。」

「…………………夢ね。」

「ムサシ。どうした?」

「何でも。
さあ、どうする?あいつらが浮かれているその隙に襲撃しちゃう?」

『賛成♪♪♪』


しかし思いつきでGET出来る程、ピカチュウは甘くない。
すぐに返り討ちにあって‘嫌な感じ。’になってしまった。


「やっぱりピカチュウは強いニャ?」

「どうする?リベンジする?」

「いや、もう今日は止める。」


ムサシがやる気無く答える。
彼女がそう言ったからにはもう決定事項だ。


「なら、各自自由行動でいいな。」

「私、買い物行ってくる。」

「行ってらっしゃい。」


ムサシはロケット団の服から着替えて街に買い物に行く。



「ふ~う。」


彼らから離れたのを確認してムサシは軽くため息をついた。


「夢か。」

盛んな街の為に色んな道がある。



色んな職業の人達が働いている。


お花屋さん。
保育士さん。
看護師さん。
テレビではアイドルが楽しそうに歌って踊っている。


(小さい頃は色んな職業に夢を持っていたなぁ。)


何故か分からないがあの時は夢に向かうサトシ達がキラキラ輝いていて眩しかった。


(まあ、夢はしょせん夢よ。
今割りと楽しくやっているし。


なんからしくない事思い出しちゃったな。
そう言えば後、もう一つ何か夢があったような?)







‘あなたの夢叶いますよ。’

「えっ?」


声をかけてきたのは露天の占い師だった。



‘あなた色々な夢を諦めてきましたね。
過去を見れる私のネイティオが少し困ってます。’

‘ティオ。’

「ちょっと!!!勝手に人の過去を見ないでくれる!!!」

‘慌てなさんな。
代わりに素晴らしい未来があります。’ 

「素晴らしい…………未来?」

‘あなたが昔願った夢、もうすぐ叶いますよ。’

「昔願った夢?



アイドル♪そして念願のトップ女優に♪



あれ?」


少し夢うつつになっている間に占い師とネイティオは消えてしまった。


「何だったのかしら?
まあ、ただで占って貰ってラッキー♪



夢ってどの夢かしら?♪」


戻ってきた時のムサシは上機嫌でコジロウとニャースは困惑を隠せなかった。


「♪♪♪♪♪♪♪♪♪」





「コジロウ。戻ってきてからずっとああニャ。
どうしたニャ?」

「さあ。何か美味しい物食べてきたんじゃないか?」

「変な物の間違いニャんじゃ。」

「まあ、ムサシが上機嫌ならいいじゃないか。」


そんな感じで二人の中でも解決。
‘気にしない。’と言う結論にたどり着いた。


「さあ、ご飯にするか?
ムサシ………………………。」

「大女優のサインならいつでもいいわよ。」

「………………………ご、ご飯にするぞ。」

「ご飯♪そう言えばお腹空いたわね。
早く作って。」

「なんか凄く女優気取りだニャ。」

「だって私は将来大女優になるんだもん♪」


未来の結果はムサシの中で女優と決まったようだ。


それに対してコジロウは慣れた対応を見せる。


「はい。はい。
それではムサシ様。ご飯を作っている間にお風呂を入ってきたらどうですか?」

「うむ。そうしよう。」

「コジロウは甘いのニャ。


ニャッ。ムサシ……………指輪買ったのニャ?」


ムサシの人差し指には可愛らしい指輪がはめられていた。


「まあ、トップ女優にふさわしい物をつけないとね。」

「もうどうでもいいニャ。」

「その指輪、お風呂入るには外した方がいいじゃないか?」

「そうね。」

「なら。」

「えっ!!!!!」


コジロウは突然ムサシの手を掴む。
そのまま目の前で膝をつき指輪を丁寧に外す。




本人はふざけの延長のつもりだろう。
しかし育ちの良さから起きた行動は自然に感じた。


「はい。こちらを。」

「………………………………。」

「ムサシ?」

「!!!!!!!!………………お風呂入ってくる。」


指輪を奪うように取ると慌ててお風呂場に行く。



コジロウは気にせず食事の支度を始めた。




ムサシが浴室のドアの向こう側で赤くなっているのを知らずに。










思い出してしまった。



誰かが自分の左手薬指に指輪をはめる事に憧れを持っていた事を。


「さっきのは逆よ。


だけど思い出してしまった。



私のもう一つの夢。」




それは、‘お嫁さん’になる事。



「もし私が叶う夢がお嫁さんなら……………………それはそれで嬉しい。



でも相手は。」


その瞬間コジロウの顔が頭に浮かぶ。


「って無い!!!!!」


目の前の残像をかき消すように湯船に顔を突っ込む。


「プハッ。本当に無い。無い。


あのコジロウよ。
ヘタレでお人好しの。
ただシチュエーションが重なっただけよ。



だって私の理想は頼りがいがある人よ。
そう。コジロウとは真逆の人。



そうと決まったらやってやるわよ。



夢は自分で叶える物。




私は絶対に夢を叶える。



オーホッホ♪」


一度は慌てたがすぐに切り替える。



「やっぱりムサシ、怖いニャ。」


内容はよく分からないが、バスタオルを持ってきたニャースはドン引きしていた。







次の日、何か言っているコジロウとニャースの言葉にまったく耳を貸さず、再び街に出掛ける。



「まずは改めて自分の結婚像を見つめ直すか。」


そう言いつつも決まってはいる。


「やっぱりスプーン一杯の幸せがそこにある生活よね。



それで相手はイケメンでお金持ちで優しくて。



そして…………………………………………。」


最後の願いは自分の中にしまう。


「とりあえず占い師の言う事が正しければ必ず運命の相手は現れるはずよ。



とは言いつつも何をすれば?」

‘あの、すみません。’


色々考えていたら誰かに声をかける。


‘もしよろしければお茶をしませんか?’ 

(こんな時にナンパ?
幸先良好だけど今はそれどころじゃないの。)


断る気満々で振り向く。


「悪いけどナンパで釣れる安い女じゃ……………………あっ。」


しかし振り向いた瞬間、気持ちは一転する。


‘あっ、そんなに警戒しないでください。
本当に……………………。’

「行きましょ!!!!」


相手の手を取り即決。




何故なら彼はムサシ好みのイケメンだったから。










近くのカフェに案内してもらう。


「突然ですみません。僕の名前は‘アズサ’って言います。
お名前は?」

「ムサ………………ムサリリンと言います。」

「ムサリリンさん。素敵な名前だ。
よろしくお願いします。」

「あのっ。何で………………。」

‘失礼します。ご注文はよろしいですか?’


ウェイトレスに声をかけられてムサシは慌ててメニューを開く。


(うわぁ。色んな種類があるわね。
気になるのはこの新作ね。
よしっ♪これにしよう♪)


元気にメニューから顔をあげて注文する。


『この特製木の実ブレンドジュースください。』


アズサと声があう。


「えっ。」

「一緒ですね。」


その言葉と笑顔にムサシの心は暖かくなる。


(何か新鮮。
だってコジロウと食べ物関係で合った事ないもの。)


ムサシはアズサに惹かれ始めていた。


「改めて聞くけど何で私に声をかけたの?」

「それは………………あなたに運命を感じたからです。」



普段のムサシなら‘安直’と感じてスルーしていただろう。


しかしその言葉で更にアズサに興味を抱く。


(そうよ。これぞ、占い通りの運命。)


完全にムサシはアズサが自分の運命の結婚相手と信じこんでいた。

更に状況はムサシの思い通りに進んでいく。


「えっ。アズサさんが働いているのってあの有名な会社。」

「いや、そんなにたいしたものでは。」

(たしか年収高額って聞いたわね。
金持ちじゃない♪)

「そろそろ出ませんか?
ムサリリンさんを連れて行きたい場所があるんです。」


そう言い椅子を軽くひき、ムサシをエスコートしてくれる。


(対応が大人。優しくて紳士♪)


素直にアズサに着いていく。


(見える♪見えるわ♪
彼との結婚生活が。)


アズサとムサシは楽しそうに色んな所を手を繋ぎ一緒に歩く。


(そしてスプーン一杯の幸せを。




あれ?




それは見えない。



何で?)

「着きましたよ。」


考え事をしている間に目的地に着いた。


少し疑問があったがそれを振りほどき彼についていく。
アズサが連れてきてくれたのは高級会員制クラブ。


「うわぁ♪広い♪」

「よく行く所なんです。
良ければゆっくりしていってください。」


そう言いムサシの背中に軽く手を添えエスコートしてくれた。


(やっぱり彼で間違えなかったのよ♪)



しかし十分後。


「ムサリリンさん、飲み物ならあそこです。
一緒に行きましょう。」

「はあ。」


アズサがムサシからまったく離れない。


(初めてだから気を使ってくれているのかもしれないけどもう少し自由にして欲しいな。
まあ、結婚したら常に一緒だから文句言っちゃ駄目か。)


期待を満ちた目でアズサを見る。





しかしアズサはムサシを見ていなかった。
強ばった顔でフロアに居る一人の人物を見ていた。


‘アズサ。’


女の子が声をかけてきた。
アズサはその人を見ていたのに気づく。


‘アズサ。この前の事は………………。
あっ、その人……………………。’


女性はムサシを警戒して見る。


しかし敵意を感じない。寂しそうに見つめる。



‘そっか。新しい彼女が出来たんだ。’

「そ、そうだよ。」


アズサがムサシの肩を抱き引き寄せる。


(修羅場ってやつ。
まあ、いいわ。何だかんだで彼が私を選んでくれたと思えば。)



しかし次の彼の一言がムサシを夢から覚ます。


「言っただろう。
次はスタイルの良い彼女を作るって。」

「えっ。」

「お前はここに連れてきた時もいつでも自分にふさわしくないと言っていた。


もう聞き飽きた。
そんなの俺は気にしていないのに。


だから今度はそんな事言わない女性と来るって決めたんだ。」

‘そう…………………………だよね。’

「………………………………ムサリリンさん、行きましょう。」


アズサがその場から離れようとする。



しかしムサシは動かない。


「ムサリリンさん?」

「私を選んだのは、彼女に見せつける為だったの?
……………………本当に見かけだけで選んだのね。」

「すみません。お詫びは必ず。」

「ふざけないで!!!!!!!」


ムサシは彼を突飛ばし手をあげる。


空気が張りつめる。


「……………………………………………………。」 


ムサシはあげた手をそのまま下ろした。


「ムサリリンさん。」

「彼女の気をひきたいなら別の方法を考えなさい!!!」


そう言い会場から飛び出した。



彼と彼女が元通りになったのは別の話。

「そうよね。そんな上手い話無いわよね。
あ~!!!危なかった。」 


一人ぶつくさと言いながら歩く。



「まったく人を見た目だけで選んで失礼しちゃうわね。






まあ、私もそうだけど。
彼の事何も知らずに………………舞い上がっちゃった。」


冷静さを取り戻してきた。


「何やっているんだろう?
特にすぐに結婚したい訳では無いのに。



占いなんか当たるもはっけ当たらぬもはっけ。


本当に叶えたい夢があったら自分で叶えてみせる。



今はピカチュウゲット!!!
仕事に集中よ。」


いつものモードに切り替えて、アジトに戻る。


「絶対にジャリンコピカチュウゲットするわよ!!!」

「ビクッ!!!お、お帰り。」

「いきなり何なのニャ。」

「あんた達、明日から今まで以上に働いて貰うわよ。」

「理不尽だニャ。」

「まあ、いつも通りのムサシになったな。」


コジロウとニャースはやれやれと言う感じでムサシを迎え入れる。



「とりあえず明日からは通常業務で頑張るニャ。」

『おうっ!!!』


いつもの三人組に戻る。


(やっぱりこの感じが良い感じね。)

「ところでムサシは今日は何処に行っていたのニャ?」

「えっ………………………………買い物よ。」

「また無駄遣いしたのニャ。」

「いいでしょう。」

「まあまあ。とりあえずご飯は今から作るから。
それまでムサシはお風呂に入っていてくれ。」

「分かったわよ。」


今日はさっさとお風呂場に行く。


「ふうっ。一瞬詰まったけどバレてないわよね。」


安心して浴槽に身を沈める。


「まあ、良い勉強になったわ。
特に私の理想は確定したわ。



やっぱり私の理想の結婚相手は…………………………。」


湯船の中に自分の理想を呟く。





「随分長湯しちゃったわね。


コジロウ。お腹空いた。
ご飯~。」

「もう出来るから座っていて。」

「分かった。あれ、ニャースは?」

「疲れたから寝るって。」

「さっき会った時は元気そうだったのに。」

「さあ、出来たぞ。」

「おおっ♪」


目が輝く。


「これ全部私の大好物。」

「ニャースには悪いけど先に食べるか。」


そう言い二人で‘いただきます。’と言う。


「美味しい♪」

「ムサシは本当に美味しそうに食べるな。」

「何よ。馬鹿にしてる?」

「いやいや。」

「それにしてもこれよく作れたわね。
本来は今日出発するから材料なんて…………………………。」


そこでムサシはある結論にたどり着く。


(もしかして私が落ち込んでいるのに気づいて用意してくれた。)

「ニャースの分はこっちに取っておくか。」

(ニャースが早急に材料を用意してくれてコジロウが。)

「どうした?俺の顔になんかついているか?」

「な、何でもない。」


慌てて一口頬張る。





(私の理想の結婚相手。



それは私を理解してくれる人。
それって……………………。)

「味付け大丈夫か?
俺とムサシ、少し味覚が違うからな。


食の好みも違うし。
でも、そのお陰で色んな物知れて楽しいな。」

(私がコジロウと結婚したら。)

「あっ、ムサシ。
口に食べ物ついているぞ。」


そう言い優しく、自然に拭いてくれた。



(簡単に想像出来ちゃった!!!!)


赤くなるのを誤魔化し、必死に料理を食べられる。


(誰がコジロウなんかに。



今は仕事。




今はこのままでいい。)



ムサシの理想はイケメンでお金持ちで優しくて頼りがいがあって自分を理解してくれる男性。



占い師の予言はわりと早めに当たるかも。



2016.06.23
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自分が恋愛要素のあるお話しを書けないので、お願いしてムサシを中心に書いていただきました。
ミイスケ様の書くコジロウは理解があって心が海のように広くて読む度にヒョェァみたいな声が出ます…
素敵な小説をありがとうございます。

春光カコ

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